「観察古今東西」

 何事によらず、「観察」というのは大事です。

私たちのような療術でしたら、患者さんを観察します。

サービス業や営業職の方でしたら、お客さんを観察するでしょう。

親御さんでしたらお子さんを観察していると思います。

「観察」というと理科の実験のようですが、漢字をみると「観て」「察する」となります。

 実に味わい深い意味をもった言葉と言えるでしょう。

 

 観察の方法も、時代と地域によって大分変ってきているようです。

それがよく分かるのは美術作品の表現だと思います。

美術作品をみるとその時代の雰囲気と共に、何を観察していたかが観えてきます。

 

 一般的に西洋は「見えた物事を見えたままに」「空想も現実のように」表現しているように思います。

 他方、東洋はもっと感覚的な経験を表現しているように思います。

美術の教科書を見ても西洋の古典美術は写実的な作品が多いです。

一時期、印象派のように視覚外の感覚を表現する画家が出た時期もありますが、

美術の訓練は「見えた物事を見たままに描く」ことが基礎です。美大受験のデッサンもそうですよね。

 日本や中国等、東洋の美術はどうみても写実ではありません。

どんな超絶技巧の画家でも、西洋的な視覚の再現とは違います。

東洋の美術が描いていたのは視覚ではなくもっと多面的な感覚経験だったのではないかと思います。

 

 もちろん、東西の違いで優劣はありません。

西洋美術は視覚的な再現を追及し、究極的には目に見えない処まで表現しているように思います。

東洋の美術は、目に見えない物事まで表現し写実では表現できない「気配」を感じさせます。

 

 東洋も西洋も、最終的には目に見えないところまで表現しているのですが、入り口が違いました。

日常生活の観察で、どの入り口が自分に適っているか試してみるのも面白いと思います。

 

 私たち療術の分野でも西洋的入口と東洋的入口があります。

先ず命の根本からつかまえて具体的な現象を観察する東洋的な入口。

具体的な現象の観察から根本の存在に至る西洋的な入口。

 

 皆さんの専門分野でもさまざまな観察があると思います。

観察を深めて生活を豊かにしていきましょう!

 

 

 

葛飾北斎「冨嶽三十六景・甲州石班沢」

ミケランジェロ「ピエタ」