自律神経のバランスが崩れ、身心の様々な不調に悩む方がいます。
症状とまではいかなくとも、ストレスにさらされて自律神経が乱れ、体調がすぐれないということは多いです。
これはどういう事が起こったのでしょう?
ストレスへの反応は主に二つ。
「闘争/逃走」か「不動化」「解離」です。
ストレスにさらされると、普通は「闘争/逃走」に有利なように緊張状態に入ります。
逃げるか戦うかという緊急の行動に適した状態です。
自然界では、どちらかの行動をとり、危機が去れば緊張状態も解かれます。
しかし、人間社会のストレスの多くは、逃げるも闘うも出来ない事が多いです。
職場でのストレス、家庭でのストレス、学校でのストレス。
どれも、「闘争/逃走」が難しく、行動に出るにはかなりの覚悟が必要です。
だから、緊張状態が解けない。
そして、また次の日もそのまた次の日もストレスは続きます。
緊張は解けません。
緊張状態が常態化すると、リラックス時に適したことが上手くいかなくなります。
例えば、睡眠、消化・吸収です。
また、緊張状態は回復や成長も阻害します。
衝撃的な強いストレス(例えば暴力、大事故)の場合は「闘争/逃走」でなく「不動化」「解離」の反応となります。
耐え難い苦痛や外力から身を護る為に、動かなくなる又は感じないように気絶する。
動物でしたら「死んだふり」と言われる反応です。
人間の場合も気絶したり、身体と心を切り離して他人事のように感じるという反応をします。
この反応の後にはいわゆる「トラウマ」という深い傷が残る事が多くなります。
この頃ではすっかり一般的な用語になってしまったPTSDですね。
深刻な問題です。
どちらも自律神経の「正常な」反応です。
けれど、日常生活に困難が生じる為、異常だと捉えられてきました。
ポージェス博士の「ポリヴェーガル理論」では、この自律神経の反応を正常とします。
先ずは正常と認識し、身体がとるべき反応をしてくれたことを評価します。
トラウマ治療は、まずは自己を肯定することから始めます。
臨床的なテクニックは、それぞれの臨床家に任されますが、
治療のスタート時点で患者を肯定することの重要性を主張しています。
初歩を間違えたら、また基本方針を間違えたら患者の回復は難しいでしょう。
自律神経失調の方は、自分を否定してしまうことが多いようです。
「何故あの時、動けなかったのか」「自分は弱い人間だ」等のように。
自己否定はさらなるストレスとなり、改善するのは難しくなっていきます。
自律神経失調とされている事が、身体の正常な反応であることを認めていくのが良いようです。
「ポリヴェーガル理論」はトラウマ治療に新しい希望をもたらしています。
自律神経の問題に関心のある方は、是非『ポリヴェーガル理論入門』をご一読下さい。
難しい論文でなく、ポージェス博士と臨床家の対談本で、一般向けの入門書です。
とても興味深い、良い本です。
皆様の健康を願います。