· 

「自律神経を見直す『ポリヴェーガル理論入門』の入門①」

 自律神経のバランスが崩れ、身心の様々な不調に悩む方がいます。

症状とまではいかなくとも、ストレスにさらされて自律神経が乱れ、体調がすぐれないということは多いです。

これはどういう事が起こったのでしょう?

ストレスへの反応は主に二つ。

「闘争/逃走」か「不動化」「解離」です。

 

ストレスにさらされると、普通は「闘争/逃走」に有利なように緊張状態に入ります。

逃げるか戦うかという緊急の行動に適した状態です。

自然界では、どちらかの行動をとり、危機が去れば緊張状態も解かれます。

しかし、人間社会のストレスの多くは、逃げるも闘うも出来ない事が多いです。

職場でのストレス、家庭でのストレス、学校でのストレス。

どれも、「闘争/逃走」が難しく、行動に出るにはかなりの覚悟が必要です。

だから、緊張状態が解けない。

そして、また次の日もそのまた次の日もストレスは続きます。

緊張は解けません。

緊張状態が常態化すると、リラックス時に適したことが上手くいかなくなります。

例えば、睡眠、消化・吸収です。

また、緊張状態は回復や成長も阻害します。

 

衝撃的な強いストレス(例えば暴力、大事故)の場合は「闘争/逃走」でなく「不動化」「解離」の反応となります。

耐え難い苦痛や外力から身を護る為に、動かなくなる又は感じないように気絶する。

動物でしたら「死んだふり」と言われる反応です。

人間の場合も気絶したり、身体と心を切り離して他人事のように感じるという反応をします。

この反応の後にはいわゆる「トラウマ」という深い傷が残る事が多くなります。

この頃ではすっかり一般的な用語になってしまったPTSDですね。

深刻な問題です。

 

どちらも自律神経の「正常な」反応です。

けれど、日常生活に困難が生じる為、異常だと捉えられてきました。

ポージェス博士の「ポリヴェーガル理論」では、この自律神経の反応を正常とします。

先ずは正常と認識し、身体がとるべき反応をしてくれたことを評価します。

トラウマ治療は、まずは自己を肯定することから始めます。

臨床的なテクニックは、それぞれの臨床家に任されますが、

治療のスタート時点で患者を肯定することの重要性を主張しています。

初歩を間違えたら、また基本方針を間違えたら患者の回復は難しいでしょう。

 

自律神経失調の方は、自分を否定してしまうことが多いようです。

「何故あの時、動けなかったのか」「自分は弱い人間だ」等のように。

自己否定はさらなるストレスとなり、改善するのは難しくなっていきます。

自律神経失調とされている事が、身体の正常な反応であることを認めていくのが良いようです。

 

「ポリヴェーガル理論」はトラウマ治療に新しい希望をもたらしています。

自律神経の問題に関心のある方は、是非『ポリヴェーガル理論入門』をご一読下さい。

難しい論文でなく、ポージェス博士と臨床家の対談本で、一般向けの入門書です。

とても興味深い、良い本です。

 

皆様の健康を願います。