言うまでもなく、人間の体は一つながりです。
痛みの原因が思わぬところから来ることはよくあります。
体のつながりの考え方の一つにアナトミートレインというのがあります。
これは筋膜のつながりをいくつかのラインで捉えて、その関連を説明しています。
また、理学療法士の運動連鎖という考え方も重要です。こちらはその名の通り運動がどのように連鎖していくかという考え方です。運動連鎖に無理があれば故障につながりますし、逆に無理がなければ効率よく高いパフォーマンスを発揮できるというものです。
もちろん、人間には個人差があり、また個人的な癖もありますので、理論通りにいかないことも多いのですが、理論という地図があると実際の臨床も歩きやすいものです。
さて、今回はタイトルの「おしりの奥の筋肉が痛い」について考えていきます。
股関節周りの不具合にも色々ありますが、おしりの奥の筋肉というと有名なのは梨状筋です。この筋肉は股関節を外旋するのが主な作用です。
(股関節外旋というのは、脚を伸ばした状態なら、膝やつま先を外に向く運動です)
梨状筋に負担のかかる要因は何か?
例えば以下のようなことが挙げられます。
① 神経と筋肉の連携がうまくいかず、梨状筋そのものに力が入りにくくなっている
② どこか他のところの代償として股関節を外旋させている
③ 筋膜のつながりのあるどこかの不具合が影響して梨状筋に不具合が生じている
まず、①について、骨盤の不具合があるとします。
股関節は腸骨と大腿骨の関節なので、骨盤の不具合によって固有受容覚にエラーが生じ、筋肉の反応が鈍ることは珍しくありません。とくに梨状筋は仙骨と大腿骨に付着する筋肉です。腸骨以外にも、仙骨からも直接的な影響を受けます。
②のどこかの代償として梨状筋が緊張していることもよくあります。
中殿筋という股関節を外転する筋肉があります(外転とは脚を外に開く作用です。歩行の片足立ちの局面での重要な働きです)。
この中殿筋の外転作用が何らかの原因で弱くなった時、歩行中に股関節外転の弱化を股関節外旋で補うことができます。しかし、梨状筋は小さな筋肉で中殿筋のように強力ではありません。長時間歩行するなどすれば、負担が蓄積して痛めてしまうことにもなります。
最後に③の筋膜のつながりでは、足からの影響を紹介したいと思います。
アナトミートレインの考え方で、梨状筋は後脛骨筋と同じ筋膜のラインにあります。
後脛骨筋とは、ふくらはぎの奥にある筋肉で足を内返しする働きがあります。
足の甲の骨や、足関節に制限があると、後脛骨筋に不具合が生じる可能性があります。
後脛骨筋に不具合が生じた為に、同じ筋膜のライン上にある梨状筋を傷めることも十分にあり得ます。
この場合、後脛骨筋にアプローチする前に、足関節や足部の不具合がないか確認します。
もしあれば、後脛骨筋そのものの不調ではなく、足関節や足部の不具合として施術するほうが全身の調和がとれていく場合が多いです。
以上、梨状筋を例に、どのように不具合が生じるメカニズムについていくつか簡単に紹介しました。
離れた部位からの影響についての理解につながり、あなたの生活がより良いものになれば幸いです。
皆様のご多幸とご健康を願います。
さとう接骨治療室