今回は「固有受容覚」と「前庭覚」です。
運動や健康に関心のある方には、だいぶ一般に知られるようになった用語ですが、まだ馴染みがない方も多いかと思います。
「固有受容覚」というのは、運動中の体の位置や、力の入れ具合等の感覚です。
運動している時に、関節がどの程度曲がっているか、腕や脚の位置はどうなっているか等を感じ取ります。
また、バランスを保つための身体運動の細かな調整や、重力に抗して姿勢を保つのも固有受容覚の働きです。
受容器は関節や筋肉にあります。
身体の状況を具体的に感じ取り、調整するのが固有受容覚といえるでしょう。
他方、「前庭覚」は固有受容覚よりも大きな、身体全体の状況を感じ取ります。
身体の傾きや、移動する際のスピード、回転、重力を感覚するのが前庭覚です。
受容器は耳の奥、三半規管、耳石器にあります。
前庭覚は覚醒とも関係があります。
脳が目覚めているとより前庭覚もしっかりします。
眠いと体がふらふらしますが、その感じをイメージするとわかりやすいでしょう。
怪我の回復途上等で朝に体が痛むことがあるのは、前庭覚がしっかり働いていないことは大きく影響しているでしょう。
体の大まかな傾きがあやふやでは、固有受容覚も適切には機能出来ないからです。
上手く力が入らないし、身体運動の調整がスムーズでなくなりますので、痛めたところへの負担が大きくなります。
前庭覚を鍛えることで、もう一つ重要なことは覚醒状態のコントロールがしやすくなることです。
前述の通り、前庭覚は覚醒と関係がありますので、前庭覚の能力が低下していると覚醒も不安定になります。
覚醒のコントロールが出来ないために、カフェインに頼りがちになっている方も多いようです。
日中にきちんと活動し夜はしっかりと休むためにも、前庭覚がよく働くようにしておくことは重要です。
では、前庭覚や固有受容覚の機能をしっかりするにはどうしたらよいでしょうか。
バランストレーニングです。
習慣化できるように日常生活の中でできるシンプルなことがよいです。
バランスパッド、ボード、ボール、いろいろなグッズもありますので、可能な方はそういうものを購入するのもよいでしょう。
そこまでしなくても、片足立ちや座布団を重ねた上に立つくらいのことでも十分です。
慣れてきたら目を閉じての片足立ちも効果的です。
ダンサーや運動選手のトレーニングでも固有受容覚や前庭覚の訓練は行われており、難易度は違いますが、やっていることの方針は同じです。
是非、やってみてください。
皆様のご健康とご多幸を願います。
さとう接骨治療室
写真:Joshua Earle