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「生きる目的」

 

このコラムで何度か触れましたが、昔、野口晴哉(のぐちはるちか)という整体の名人がいました。

この野口先生の言葉に「人間の生きる目的は、ただ生きることだ」というのがあります。

何か目的があって生まれたのではない、ただ生きて死ぬために生まれたのだというのです。

僕にはよく分りませんでした。やはり何か使命があると思う方がカッコいいです。

しかし、それは違うのだと最近になってようやくわかるようになりました。

 

野口先生の文章を引用します。

「…人間の生活はその生命の芸術でありまして、そのこと自体に何の意味があるのでもありません。ただそして死んでゆくのであります。花が咲き散ること、蜩が懸命に唱ひ、蝶が舞つて死ぬことと少しも変わらないのでありますが、この現実を直視することを怖がつて、人々は俺は何々すべく産れたのだとか、かういふことをやる為に生きてゐるのだとか、生きてゐることの目的を自分でつくつてその考へに陶酔してをりますが、しかし人間の生きてゐることの意義は生きてゐることそのものでありまして、生くる目的をいろいろとつくつてゐることは目的と手段をとり違へてゐるのであります」

 

打ちのめされると同時に救われたような、大きな感激がありました。

 

人生いろいろありますが、結局は生れてから死ぬまでのことです。

苦しみ、悲しみには時に美しさもありますが、憎しみや恨み妬みには醜さがあります。

ネガティブな感情も全くの無駄ではないと思いますが、取り返しのつかない過ちは嫌です。

お互いに気持ちよく付き合い、そして別れたいものです。

人生という生命の芸術をより良くしていきたいと思います。

(僕にはまだまだ鍛錬が必要です)